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環境影響評価と生活環境影響調査の違い|廃棄物焼却施設の例

技術士事務所 森と水と

· 環境アセスメント,ミニアセス,条例アセス,生活アセス,廃棄物処理施設設置許可

技術士事務所森と水との鎌田です。

環境影響評価と生活環境影響調査の違いについて、廃棄物焼却施設を例にご説明します。

環境影響評価は、広義の意味では、建設事業を行う際に環境にどのような影響を及ぼすか、事前に調査予測評価を行い、必要な環境保全対策(環境保全措置)を行うことです。そういう意味では、生活環境影響調査についても、それに含まれると考えることもできます。

ただ、現実的には、やはり広義の意味ではなく、それぞれ環境影響評価法や自治体の条例アセスを一般的には「環境影響評価」といい、廃棄物処理法に基づき廃棄物処理施設の設置等の際に行われる調査を「生活環境影響調査」としています。

それでは、具体的にどのように違うのかご説明します。 

環境影響評価法では、環境アセスメントの対象となる事業は、道路、ダム、鉄道、空港、発電所などの13種類の事業があります。焼却施設は、この法律の対象事業には含まれておりません。

しかし、環境への影響は少なからず予想されるため、都道府県によって様々ですが、各自治体の条例によって、この焼却施設が環境影響評価の対象となっていることがあります。

たとえば、東北地方、関東地方の各県の状況を見てみると以下の通りです。

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各自治体によって、対象事業の規模要件が異なったり、対象としていなかったり様々ですが、対象となった場合は、各自治体の環境影響評価条例に基づき、環境アセスメントを行う必要があります。

一方、生活環境影響調査については、廃棄物処理法の規定により、いくつかの種類の焼却施設が生活環境影響調査の対象となっています。以下にその一覧を示します。

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処理能力や規模等、やはり生活環境影響調査の方が、小規模な施設まで対象となっていることがわかります。さらに、汚泥、廃油、廃プラ、PCB等、いろいろな種類の施設が詳細に設定されています。

当然ながら、上述した環境影響評価と生活環境影響調査では、実際に行う調査も随分異なります。

まずは、環境影響評価の場合(山形県の例)は、下表のような項目について、調査を実施する必要があります。

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一覧中の丸印について、調査を行う必要があります。お気づきのように、赤で囲んだ部分は、主に自然環境に関わる項目です。これらについても、事業実施区域周辺の関係地域について、概ね通年にわたり調査を行うこととなります。

また、この表からはわかりませんが、いきなり調査を開始することはできず、まずはどのような調査を行うか示した方法書を作成し公告縦覧を経て、初めて調査開始となります。その後、通年に渡り調査し、予測評価を行い、準備書、そして評価書の作成となります。いずれも公告縦覧は必須です。また、評価書まで終了すれば事業開始は可能ですが、今度は工事中、供用後に渡って事後調査が求められます。ここまでの期間は、場所や事業の内容によって一概には言えませんが、概ね3年間は必要でしょう。

今度は、生活環境影響調査について調査項目を見てみます。

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これは、環境省から出されている生活環境影響調査指針に示された焼却施設の標準的な項目です。

文字通り、生活環境に関わる項目が中心となります。焼却施設は廃棄物処理施設の中でも環境へのインパクトは大きく、四季を通じた大気環境の調査等が求められることもあります。

ただ、大きく違うのは、前述した通り、自然環境に関わる項目は含まれておりませんし、方法書や準備書、評価書等は必要ありません。焼却施設の場合は、公告縦覧は求められますが、環境影響評価と調査期間は大きく異なってくることとなります。

経験的に、環境影響評価(法・条例アセスメント)と生活環境影響調査は随分違いがあります。

産業廃棄物処理のため、焼却施設を設置計画される際は、各自治体によって様々な環境影響評価の規模要件を十分確認し、事業計画を立案していくことが重要です。

技術士事務所 森と水と

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