私はこれまで40年以上、環境アセスメントに携わってきました。
道路建設、住宅団地開発、工業団地建設、レクリエーション施設建設(ゴルフ場など)、廃棄物理施設建設、土地区画整理事業など、実に様です。
一つ一つ思い出に残るものばかりで、現場に張り付いていたこと、役所との協議で深夜まで及んだこと、設計サイドとの連日の協議、準備書提出前の徹夜作業など、本当にそれらの経験が今日の自分に結びついているんだなと感じています。
コラムのテーマにあげた「環境アセスメントの限界」は、少し言い過ぎかもしれませんが、実感として感じているものです。
それは、環境アセスメントは、「事業主が行う」というスタンスにあります。
どういうことかと言うと、事業主は民間であれ、役所であれ、どうしても建設事業を円滑に進めることを第一に期待します。その意思は、スケジュールや環境対策、調査予測結果にまで及びます。いつ頃までには事業認可を受け、建設工事に着手し、供用開始を始めたい等々という形で伝えられることとなります。
調査には必然的に時間を要します。また、調査の結果、貴重な動植物の生息生育などが確認された場合は、適切な環境保全対策を検討する必要が生じます。このような場合、事業者、設計サイドと入念な協議、設計変更等が求められますが、上述の通り、事業者にとってのスケジュールは絶対であり、十分な時間をかけて検討することは至難の業です。
ただ、コンサルタントとしては、ここが腕の見せ所ですので、経験や様々な技術者の協力のもと、何とか当初の工程に遅延がないよう努めます。
しかし、環境アセスメントを事業者が行う以上、この状況はきっと変わらないでしょう。
環境の技術者は建設事業を行う上で最後の砦のような形となることが多く、環境アセスメントが終了しないと事業の全てが始まらないような雰囲気にさえなることがあります。
また、環境アセスメントを行う際の事業主の環境への理解度も非常に重要です。保全対策の検討は時には供用する面積を減らすことになったり、施設内容の見直しに迫られることも多いです。この時に事業主の環境への理解度があれば、適切な対応をすることができますが、そうでない場合は、不十分な対策内容で報告書をまとめあげるようなこととなります。
環境アセスメントに着手する際には、方法書をまず作成しますが、ただ作業に入るのではなく、一方では、予想されるような環境への影響について、事業者に十分伝えることがコンサルタントとして必須だろうと考えています。
環境の仕事がしたいと思われる若い方々もいると思います。
動植物などの自然が好きでそれらの調査をするような仕事をしたい、このような希望を持っている方が非常に多いです。確かに大きな事業ともなれば、何年にもわたって現場に通うことになるでしょう。ただ、同時に事業者の意思を尊重しながら、調査を進めていく姿勢が強く求められます。
決して甘い仕事ではありません。
単に調査予測評価の精度を上げていくこと、最新の知見に基づいた予測を行うことだけでは不十分であり、事業者が行う仕事である以上、事業者に対して環境について常に丁寧に説明し理解を求めることが最も大切であり、最も難しいことだと感じています。